『SCMの真髄を追い求める旅へ』

〜とあるベテランSCMコンサルタントの独白〜 35年以上の経験を持つSCMコンサルタントがこれまで言わなかった本当のことを語り尽くす!

2-1-3.より良くマネージするための準備(その4)

2-1-3-3.合意形成のためのダイバーシティ

 

ここまで見てきたように、人材の多様性への移行ということは歴史的にも現代的問題としても避けては通れない必然的で受け入れざるを得ないものということが分かります。
ではサプライチェーンという職場環境に多様な人材が増えて来てその中で仕事をうまく進めていくためには、指示したり意見を聞いたり合意形成を図っていくことが必要です。そのためには多様性に由来するどのような課題を克服していく必要があるのでしょうか。

 

先ほどのGPT-4の回答にあるように多様性の人材には『年齢、性別、人種、宗教、趣味嗜好などさまざまな属性の人』がその対象になります。外見や他の感覚器官である程度は分かることもあれば内面の属性としてなかなかうかがい知ることができないことも当然たくさんあります。また趣味嗜好などは時間の経過によって変化することもあるでしょう。ここで例として挙がっている例以外でもたとえば、思想、信条、歴史観、主義主張、言語、民族、差別意識、地縁血縁、派閥学閥、最終学歴、職歴、習熟度などを思いつきました。この例示が多いほど皆さんにこれからの議論をより身近に感じていただくためにはとても重要です。

 

いろいろな点で「自分」とは、あるいは「自分たち」とは「違う」人たちが同じ場所で同じ職場で同じ仕事をするという場面を想像してみていただきたいのです。
年代が大きく違う、話す言葉が違う、話が通じない、見た目が全然違う、全く違う考え方をする、常識が通用しない、共通の話題がない、自分たちを下に見ている、仲間だけかたまって他と交わらない、変なにおいがする、見たこともないものを持っている、違うものを食べる、なんか気持ち悪い、怖いなどなど。
自分の職場などの生活圏にそのような多様性を持った人や集団が入って来たときにどのように感じるでしょうか。多様性を持った人や集団は何らかの違和感や居心地の悪さから極端な場合には嫌悪感をもたらすものです。きれいごとでは済まされず、これはお互い人間同士ですから当たり前で当然のことだと言えます。

 

日本語にはオノマトペという便利な語法があるので、それでこの「感じ」を私なりに表現してみるとこうなります。
モヤモヤ < モゾモゾ < ソワソワ < ザワザワ < イライラ

 

自分との質的量的な違いを距離感に換算してその遠近によりこの感じが決定されているのではないかと思います。
単数でも複数でも同じなので単数で表現しますが、自分とは異質な人の「存在」に対しては大なり小なり違和感、居心地の悪さ、異物感、不愉快さ、目障り、イヤな感じ、嫌悪感などの感情が自然と湧きおこってきてもおかしくありません。これは建前ではなく本音ベースでは誰しもが心の中に感じる生理現象のようなものでしょうか。無意識と意識の間の違和感のようなものから、強く感情を揺さぶられる嫌悪感のようなものまでです。
そのような異質と感じてしまう人とコミュニケーションの頻度が増え距離が近づくにつれて解消に向かうこともあるでしょうが、逆にエスカレートすることもあるでしょう。

 

もしあなたが聖人でなければ、ダイバーシティを実践することのスタート地点はまずこのような感情の動きが自分にも存在することを正直に認めるところからだと思います。何もないところからは何ごとも始まらないと考えるべきでしょう。そしてそこからあらゆる先入観や偏見や経験則を一度はずしてみることです。また人を集団としてひとかたまりに見るのではなく、まず目の前にいる一人の人間を個人として見てみることです。そして何よりも他者を最低でも「基本的人権」のレベルまでは尊重すると自分に再度言い聞かせてみることではないでしょうか。たとえ自分にとっては悪人と思えるような人に対しても。

 

違和感や嫌悪感を感じるような自分とは異質な人に対して、まずその存在を感じて知るということがコミュニケーションの出発地点です。そもそもそのような人はそこにいないものとして無視するのではなくて、その人が自分の生活圏内のそこにいるということを感じた自分の感覚を認めてみましょう。

 

次に相手が人間であれば自分と共通の部分がたくさんあることを実感しましょう。同じ人間なのですから共通する部分のほうが圧倒的に多数を占めていることは間違いないことなのですから。そのうえで違和感を抱くのがどこのどのような部分なのか探してみて、それがどれくらい違っているのかを考えてみます。そしてその違う部分は何にどれくらいの影響を与えるような違いなのか、大した問題なのかそうでないのか、致命的な違いなのかそうでないのかを自分なりに判断してみましょう。

 

その違いが分かったとして、そもそもそれは世の中にあってはならないようなものでしょうか。違いがあるその理由や原因やその人の言い分を聞いたら、自分としては理解できるのか、それなりに納得できるものか、少なくとも全否定するようなものなのかどうか考えてみましょう。あるいはその違いによってなぜ自分は違和感を感じているのか、自分の側に何か問題や改善すべきことはないかどうかも確認することも必要かもしれません。もし自分との違いが社会悪や公序良俗に反するもの犯罪行為などではなければ完全に撲滅したり排除すべき対象ではないということに気付くことができるはずです。

 

だとすると自分はその人自身や違和感の元になっていることと一緒にいることはできるでしょうか。相手を否定したり遠ざけたり変えようとしたりしなくては一緒にはいられないのでしょうか。自分がその人になったり、違和感の元を自分のものとする必要はないし自分の既得権をすべて手放す必要はないのですから、同じ環境に共存することはできると思うことができるでしょうか。ダイバーシティに必要なことは統合でも合一でもなく、共存や共生ではないかと思います。人間が多様な状態のまま同じところで一緒に生きていくということにその本質的な意義があると考えています。

 

自分とは異質な存在と共存できるという思いに至ることができれば後はそんなに難しいことではないのではないかと思います。建前ではなく本音で、お互いの接点、許容範囲を話し合って決めるということではないでしょうか。自分はこれはここまでは許せるけど、これをここまでされると困るというような是々非々の取り決めをすることになります。その過程では、妥協や交渉は当然必要でしょう。自分とは異質な相手ですから阿吽の呼吸や忖度は通じないかもしれません。お互い遠慮することなく接点がどこなのかを正直に正確に誠意をもって話し合う心情と態度が必要になります。

 

お互いの接点が見つかれば後はそれを守るという約束をするだけです。これはこうする、これはここまでしかしない、これを見ても指摘しないなど行動に関するお互いの約束です。心の中の感情の動きまで取り決めることはできません。こう思わないようにするという約束はできないしする必要はありません。あくまでも行動など目に見えて他人にも分かることに関する約束です。
それがお互いにとって満点ではないにしても共存・共生していくうえでは満足できるものになっているかどうか確認しましょう。満足できないものはどうせ長続きしないのですから。

 

お分かりのようにここでの記述は合意形成に至る七つの手順に即しています。ダイバーシティの受容という不可避の環境の下でサプライチェーン上のコミュニケーションや合意形成を図るためには、それぞれの手順においてこのようなことを実践できる自分であるかどうかが問われるのです。
他責にはできない自分自身の資質や能力の課題として目の前に置かれているのです。私自身も直接自分に利害が及ぶ問題に関してであれば、本質的なダイバーシティを実践できるかどうか正直自信がありません。

 

このようにダイバーシティをお題目として唱えるだけが目的ではなくて実践することを目指すのなら、安易に流行に乗って声高に標榜しないようにしましょう。これまで見てきたように共存・共生のためのダイバーシティの実践は、人間的で泥臭くて私たち一般人にとってはそう簡単には実行できないような類のものです。表面的なきれいごとだけを捉えていると薄っぺらくて中身のない人になってしまうので注意しましょう。

しかしその本質を理解し実践しようとする人が力を持っている人たちの間に増えていけば、世の中を変えるほどの潜在能力を持っているツールではないかとも考えています。が残念なことに、そのような文脈の中でダイバーシティを語っている主張や論説を私はまだどこにも発見できていません。



この項の最後に、GPT-4に更に二つの質問をしてみました。
(※2024年6月時点)

 

その回答が以下です。皆さんはどのように受け止め、感じ取り、何を語りますか?

 

質問①「ダイバーシティ経営がSCMに与える影響は何か?」

 

ダイバーシティ経営は、組織内の多様な人材を受け入れ、活用する経営戦略です。SCM(サプライチェーンマネジメント)においても、ダイバーシティ経営が重要な影響を与えます。以下に、その影響をいくつか紹介します。

 

人材獲得力の向上・強化:
ダイバーシティ経営は、多様な人材を受け入れる姿勢を示すことで、優秀な人材を引き寄せやすくなります。SCMにおいては、異なる視点や経験を持つ人材が必要です。ダイバーシティを推進することで、SCMの専門知識や国際的な視点を持つ人材を採用しやすくなります。

 

リスク管理能力の向上:
ダイバーシティ経営は、異なるバックグラウンドを持つ従業員が共存することを促進します。これにより、リスクを多角的に評価し、適切な対策を講じる能力が向上します。SCMにおいては、サプライヤーリスク管理や災害対応などでダイバーシティの視点が重要です。

 

イノベーション創出、生産性の向上:
多様な人材が集まることで、異なるアイデアや視点が交わり、新たなアプローチやイノベーションが生まれやすくなります。SCMにおいても、効率的なプロセス改善や新たなビジネスモデルの構築にダイバーシティが寄与します。

 

顧客など社外からの評価の向上:
ダイバーシティ経営を推進する企業は、社会的に高い評価を受けることがあります。顧客や投資家、パートナー企業などからの信頼度が向上し、SCMにおいても信頼性のある取引パートナーとして選ばれやすくなります。
ダイバーシティ経営は、SCMにおいても競争力を高めるための重要な要素であり、組織全体の成果に寄与します。』



質問②「ダイバーシティの経営に対するデメリットは何か?」

 

ダイバーシティを経営に取り入れることは、多様な人材を活用して企業の競争力を向上させる一方で、いくつかのデメリットも考慮すべきです。以下にいくつかのデメリットを示します。

 

組織の混乱: 異なるバックグラウンドや価値観を持つ人々が集まることで、コミュニケーションの課題や対立が生じる可能性があります。組織の運営や意思決定において、異なる意見を調整する必要があることを考慮する必要があります。

 

無意識の差別や偏見: ダイバーシティを推進しても、無意識の差別や偏見が存在する可能性があります。これに対処するためには、社員教育や意識改革が必要です。

 

コミュニケーションの難航: 異なる文化や言語を持つ人々が集まる場合、コミュニケーションの課題が生じることがあります。効果的なコミュニケーションを促進する仕組みを整える必要があります。
これらのデメリットを理解し、ダイバーシティを推進する際には適切な対策を講じることが重要です。』