『SCMの真髄を追い求める旅へ』

〜とあるベテランSCMコンサルタントの独白〜 35年以上の経験を持つSCMコンサルタントがこれまで言わなかった本当のことを語り尽くす!

1-1章.SCMの問題とその原因

1-1章.SCMの問題とその原因

 

目に見えるものはいつも  他の何かを隠している

ルネ・マグリット(1898~1967)


私たち人間は世界をありのままに直接見たり認識することはできないと言われています。私たちの脳が見たいようにしか知覚することができないとも言われます。
自分が理解可能なものとして、そのものの姿ではなく解釈した後の姿としてでなくては知覚できないということのようです。


たとえば、トリックアートなどの目や他の感覚器官の錯覚、同じ長さの線が異なった長さに見えたり色が変わって見えたりする「錯視」という現象が有名ですね。

 

脳は自らが理解できるような姿として知覚できるように、自動的に無意識のうちに情報を補填したり置換えたり更新したり型に当てはめたりしてしまうというのです。私という意識が気付かないうちに、ありのままの姿とは違う姿をありのままの姿だと思い込んで信じているということが実は起こっているといいます。
もし逆に、それをいちいち疑っていたらとても日常生活など送れなくなってしまうでしょう。また脳は処理する対象の情報量を減らすために、視線を移動させるときに元の視点と移動先の視点の途中の映像情報を無意識のうちに脳に伝えずにカットしているというのです。
もしそうしていないなら脳は情報を処理しきれなくなってしまうのでしょう。

 

では私たちがこれから検討をしていくサプライチェーンマネジメント(SCM)の世界ではどうでしょうか。

 

当然、私たちが当たり前のように知覚したり認識したりしているSCMだけは例外的にありのままの姿を捉えることができていると考えるのは合理的ではないでしょう。私たちが認識し理解している対象のSCMは、実は私たちの脳が無意識のうちに自分の都合よく更新し解釈し取捨選択した結果の姿でしかないとしたら、SCMを正しく適用し課題を解決する手段として活用するのが難しいのは当然といえるのではないでしょうか。
逆に言えば私たちの持っている能力ではサプライチェーンの全体をありのままの姿で知覚し認識することはできないので、取捨選択し情報の総量を減らしたり解像度を下げたりすることで初めて取り扱うことができるのでしょう。

 

そのような大げさな話ではないとしても、SCMの本質を見極めるためには謙虚にこれまでの経験や思い込み、成功体験を一旦捨ててみて、新鮮な視線でひとつずつ確認していくことこそ有効ではないかと思っています。

 

まずはこの辺りから、そもそもSCMとはどのようなものなのか、またSCMに内在していて課題解決を阻んでいる問題とその原因を一緒に考えていきましょう。

 


1-1-1.そもそも一般的にSCMとは何か?
1-1-2.課題解決を妨げる根本的な原因