『SCMの真髄を追い求める旅へ』

〜とあるベテランSCMコンサルタントの独白〜 35年以上の経験を持つSCMコンサルタントがこれまで言わなかった本当のことを語り尽くす!

2-3-3.業界内、業界間、社会連携での取組み(その1)

2-3-3.業界内、業界間、社会連携での取組み



外部からの不可抗力は何も専門家機関、制度、機械によるものだけとは限りません。
様々な事業者や公益法人自治体などと一緒に取り組みを進めていくことがお互いのパートナーシップ関係を不可抗力として引きさがることができない状況作りに利用するということもできるでしょう。
このようなパートナーシップ関係は決断の結果自体に対するリスクも引き下げるという効果も期待できます。



2-3-3-1.業界内:シェアリーダーのリーダーシップ

 

「昨日の敵は今日の友」という諺が示しているように、同じ業界内でしのぎを削る競合企業との間でSCMに関して何らかの活動を一緒に行うことができれば、それは有効である場合があります。
SCMにおいては既にこれまでにもコスト削減に代表される取り組みとして業界内の競合企業と「共同配送」という活動が行われてきています。
荷姿などのような製品特性、得意先、配送先、業界の商慣習などの共通点を持つ企業と共同化や共用化を進めることは単純な効率化によるコスト削減に一定の効果が期待できるでしょう。

 

これは「2024年問題」により配送などの物流機能の人手不足が更に顕在化するような状況下ではそのニーズはより大きくなっていると言うことができます。これまでのような配送コストや配送リードタイムを維持することができなくなりますが、コスト上昇や着時間指定の課金などの「すべて」を荷主企業に負担してもらうということができるかどうかは難しいというケースもあると考えられます。そのような状況では何か新しい取り組みによって社会全体におけるコスト上昇幅を少しでも小さくする努力が必要となります。またこのような企業努力はSGDsの活動として社会から一定の評価を受けることに繋がると思われます。

 

しかしこれまでも取り組んできたこのような主にコスト削減を目的とした同じ業界内での共同の取り組みは、その効果が限定されていることが多く共同化や共用化を開始するにあたっての調整事や取決め、整備すべき事項など多くの手間や作業が必要であることに対して得られるメリットが大きくならないということも多いと思われます。
そのような効果に留まることの原因と考えられることとして、同じ業界内であれば繁忙期などの季節性、配送頻度、配送時間、配送先、配送順序などが集中してしまって平準化が難しいということもあります。また各社の倉庫などから同じ配送先へ製品を運ぶことがあっても荷下ろしをした後に積み込む製品がない状態(空荷)で車を走らせることになり結果として配送効率が高くならないということもあります。

 

とはいえこのような取り組みは今後も継続してより効率性の高い共同化を模索していく必要はあると思われます。
その際には業界内のシェアの上位を占める大手企業が先頭を切ってその取り組み自体や枠組み作りを推進していくことが求められます。これは「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」高い社会的地位にあるものがより多くの義務を果たすという考え方にも似たリーダーシップをシェアリーダーである企業が発揮する役割を期待されているということだと思います。

 

シェアリーダーは業界全体の今後を見据えた戦略的な発想とそれを具体化する財務体質を兼ね備えているとみなされがちです。もし実態としてはそうでないならそのような不相応な期待をかけられても困ってしまいます。
しかし業界をリードできるような実力を持っているなら、目線を高く遠くに置いて高貴な精神で使命感を持って高邁な目標を設定し意思決定を他社に先行して実施することを業界内外から期待されているのです。
そのような行動を取れるシェアリーダーのいる業界では取り組みが進展し、そうでない業界では後塵を拝することになっていると言えます。

 

一方でシェアリーダーではない企業はそのような大手企業からの働きかけがあった場合には、それに応じることがが自社としてメリットが大きいという判断ができるのであればこのような意思決定の絶好の後押しをうまく利用しない手はないと思われます。
「機を見るに敏」という行動を取るためにはあらかじめ業界内でアンテナを張り競合企業とも一定の関係性を構築しておくことが必要でしょう。マーケティングや営業ではガチガチの競合だとしてもSCMやその他の管理部門などでは日ごろから競合同士で連携したり勉強会を開催するなど関係を維持しているケースも業界によっては存在しています。

 

このような形で企業の単位を越えた共同の取り組みを進めていくことで、活動の当事者が複数になるということから個社の単位では十分に働かないような意思決定に向けた後押しの力が発揮されやすくなるということを期待したいと思います。
そのためにも、ひとたび意思決定をして着手した活動が期待する効果を発揮して維持継続されることが重要となります。