『SCMの真髄を追い求める旅へ』

〜とあるベテランSCMコンサルタントの独白〜 35年以上の経験を持つSCMコンサルタントがこれまで言わなかった本当のことを語り尽くす!

2-3章.最後は各階層における実行の意志

2-3章.最後は各階層における実行の意志



たとえ明日、世界が終わると分かっても 私はリンゴの木を植える

 



SCMを本質的な意味で実現することは簡単ではないということは、ここまでお付き合いしていただいた皆さんには賛成していただけるのではないかと思います。では中途半端なSCMで終わらせないことはなぜ難しいのでしょうか?

 

まず第一部では原理的、構造的、生物的に超えることができない三つの障壁があることを確認しました。また形と動きにまつわる二つの複雑性と、課題や目標設定とその評価に関するきわめて人間的な問題を確認することになりました。
また第二部のここまでの検討では、サプライチェーンのマネジメントというやり繰りは果てしなく続く終わりのない活動であること、やり繰りのために必要な合意形成にはモデルとプロセスという仕組みが欠かせないものであることを確認してきました。

 

イマヌエル・カント(1724~1804)によると、人間性を構成する心のはたらきには「知」「情」「意」の三つがあるということです。
「知性」は理屈を理解したり論理的にものごとを思考したり抽象的概念的総合的な認識をもたらす心のはたらきということのようです。第二部で見てきたモデルの構築とその準備のための活動はこの知性をはたらかせて実行する活動ということができるでしょう。
次に「感情」は喜怒哀楽であり人間の行動の動機になるような力であり、強い感情は知性や理性では抑え込むことができないような力を発揮することがあります。私たちのこれまでの検討では第二部で見てきた対話による合意形成に必要な共感力や、多様性を受け入れるために他人を理解するのに必要な忍耐などがこの感情そのものと感情をコントロールする力ということができるでしょう。

 

では「意志」とは私たちの検討にとってどのような位置づけや役割が与えられるべき心のはたらきと言えるでしょうか。
中途半端な形ではなく本来目指している形でSCMを実現することは簡単ではないとしたら、その困難とも言えることに立ち向かうという行動をとるためには相応の「覚悟を決める」ことが必須となるのではないでしょうか。
覚悟を決めるとは困難などを受け止める心構えをする、決意することです。この決意がなければ行動を開始することも行動を持続させることも不可能です。

 

この覚悟を決めるために必要な人間の心のはたらきが「意志」ということができるのではないかと思います。
途中で諦めない、中途半端で終わらせない、最後までやり抜く、形骸化した妥協の産物のSCMでお茶を濁すことがないようにするためには意志として強い決意を持つ必要があるのではないでしょうか。
そしてこの知情意の三つがそろってこそ初めて、実現困難な対象である真のSCMに近づくことができるのではないかと思います。

 

この2-3章では最後のピースとなるSCMにおける「意志」について考えていきたいと思いますのでお付き合いください。



「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。 意地を通せば窮屈だ。 兎角に人の世は住みにくい。」

 



2-3-1.全員が腹をくくる、ことができるか?
2-3-2.不可抗力の意図的な導入
2-3-3.業界内、業界間、社会連携での取組み