1-4-1-3.フレームワークを使った検討方法
自社と他社事例で課題に違いがあるのは当たり前ですよね。
ではその課題の違いはどのような理由によって、どこにどのようなものとして現れるのでしょうか?
少しここで検討してみて実際に自社についてご自身で考える際に活用できるようにしておきましょう。
これから考えようとすることをうまく当てはめることができるような枠組みを設定できれば、後はその枠組みの中に考えようとしている対象を穴埋めしていくだけとなります。枠組みを使うことによっていわゆるMECE(ミーシー)と呼ばれる論理的思考の方法論による検証を行うことにもなります。
ご存知の方も多いと思いますが一応書いておきます。
Mutually:相互に
Exclusive:重複せず
Collectively:全体として
Exhaustive:漏れがない
ということの検証に利用できるということです。
私自身はこのうまく当てはめることができて自分が説明できるような枠組みを設定することができればその作業の80%は完成して、穴埋めは残りの20%くらいの比率でその重要性を捉えています。
この枠組みの「正しさ」を計る尺度はあくまでも、「うまく当てはめることができて自分が説明し切ることができるかどうか」です。したがってその観点で何度も試行錯誤を繰り返すことが通常ですが、絶対的な正解があらかじめ存在しているものではないような、今ここで新しく何かを洗い出したり、検証したり、考察したりすることをどこまでやるかということには、ここまでと言えるようなゴール設定のための基準が必要です。
どこでやめたらいいかの基準です。これを決めないといつまでも際限なくだらだらと無駄な時間を費やしてしまうことになりかねません。
自分が説明し切ることができれば、そこをスタート地点として議論を開始するための「論点」の提示ができるからです。あらかじめ絶対的な正解を自分一人で準備することは土台無理なことなので、議論を開始するための論点を明らかにすることさえできれば十分だと私は考えています。というかそこまでしか私にはできないのです。
この「枠組み」には世の中に既に存在しているものが多数あり、それを借用できれば一番効率的で本題の検討に早く着手することができます。
そのようなものが見当たらない場合は、試行錯誤(とっかえひっかえ)によって最もしっくりくるものにできればベターです。
前にも書きましたが枠組みを考える場合には少なくとも最初は二軸(二次元)から開始することが妥当だと考えています。普通の人間にはいきなり三次元以上を思考することは難しいからです。
2X2の四象限を想定した縦軸と横軸を何に設定したらいいのかを考えながら四つのマス目に埋める内容を書いてみて、その軸のしっくり度合いを検討します。2X2は基本型なのでそれが2X3になったり4X4になってもいいのですが、両軸の項目(=箱)の数が増えてきた場合はその上位階層として何と表現できるかを検討して軸自体を階層構造として表現することができればその軸の「名前」が決まります。
たとえば、一つの軸の中身を列挙していったときに、「北」と「西」が並列的に存在しているということになれば、その軸の名前を「方位」と仮置きしてみて、一つの軸を方位とした場合に既に洗い出されている北と西以外にあらたに「南」と「東」が存在していなくてはならないことになり、必然性をもって東西南北の四つの項目が列挙できることになります。
さらに、上位階層としての軸の名前として仮置きした方位とその下位階層としての四つの項目の中に現在検討している対象の全てがどこかに穴埋めできるかどうかを検証します。
重要なことは、一つの軸の「名前」を方位と仮置きしてみることにより、その帰結として構成要素である四つの項目が自己説明的(self-explanatory)なものとして論理的に決定されるということです。もちろんこの四つの項目のどれかに穴埋めを進めていく過程で必要に応じて北西、南東などを加えて八つの項目とする必要があれば軸そのものを変えることなく項目を増やすことによりうまく当てはめることができるということになります。
軸を方位と設定する(軸という名前を付ける)と、この軸を構成する項目として北、西は登場しても「下」「左」「斜め」などは登場できないということが自明となります。
枠組みを二軸の検討から開始する場合は、今の例での方位とは質的に異なる別の何らかの概念を二つ目の軸として四象限を設定することで、今検討している対象による穴埋めがすっきり収まるという軸を探してみるという手順になります。
軸として何を設定すべきか、あるいは仮説として考えてみたこの仮置きの軸がうまく機能しているかどうかを判断する方法は、その軸を構成する各項目(北、西など)の違いによって穴埋めがどこかの項目だけに集中したり、複数の項目にまたがったものとしてしか表現できないかどうかを検証してみることです。そのような状態にしかならない場合は仮置きした軸そのものの設定がふさわしくないのではないかと疑ってみる必要があります。
そのような手順を踏まえてこの仮置きの軸にうまく当てはまりそうだということになれば、この軸の項目のいずれかが空欄になっていたり他の項目と比較してほとんど中身が埋まらないということがないかを検討します。少なくとも軸とその構成要素である項目がうまく機能していれば、空欄は何かの情報で埋められるはずです。もし埋まらないとしたらもう一度軸そのものが妥当かどうかを疑ってみて別の軸に置き換えてるということが必要になります。
以上のような枠組みを利用した検討ができて一通り自分が説明できるようになった状態であれば、その時点で既に自動的にMECEの検証が同時並行的に行われていてクリアできているということになります。
ME(相互に重複せず):(二次元であれば)二つの軸のどこかの項目に重複せず配置できている
CE(全体として漏れがない):設定した軸には他の項目は存在せず、すべての象限に何らかの情報が埋まっている
私たちコンサルタントがホワイトボードや紙に何か四角形を書き始めたら、単に「またお絵描きを始めた」と捉えずに、このような思考プロセスを今まさにやっていると見ていただいて、同じように一緒に考えていただけるとありがたく思います。
では本題に戻って実際に次の項目で私が何をどのような手順で検討して「自社と他社事例における課題の違い」を整理するのかを一緒に体感していただきましょう。